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お知らせ

2025消費者志向経営セミナー「消費者との安全・安心なネット取引に向けて」を開催しました

※本セミナーは終了しました。多数のご参加ありがとうございました。

開催趣旨

 インターネットでの取引が普及する中で、昨今、詐欺的定期購入や偽ブランド品、なりすましECサイトなどによる被害、いわゆるダークパターンによる消費者トラブルの件数が増加しています。こうした状況を踏まえ、企業や業界団体などの取組みのご紹介や、今後の消費者との協働について考えるセミナーを開催いたしました。
 当日の参加者は、54名と昨年度の47名を上回りました。アンケート(36名回答)では、今回のセミナーについて5段階評価(良かった1~良くなかった5)で上位の1(30票)と2(3票)で約83%と高評価をいただきました。

【アンケートより抜粋】

  • デジタル取引に伴う事業者、消費者、行政が直面している課題をコンパクトに把握できた。
  • ダークパターンの理解が深まった。
  • 消費者としても勉強になったし、事業者としても楽天グループの安全・安心に向けた取り組みは参考になった。
  • ダークパターンに対する取り組み 安全・安心なデジタル取引に向けた消費者、事業者としての立ち位置を学ぶいい機会だった。
  • 官・民・消、それぞれの立場でいろいろな取り組みをされていることが分かった。
  • それぞれの立場から多様な意見を伺うことができ、大変ありがたかった。講演頂いた先生方の選定もよかったと思う。勉強になった。
  • 各組織では優れた取り組みをされているので、消費者を含めて相互理解・対話が重要だと思った。

日時

7月11日(金)14:00~16:15(開場13:30)

会場

主婦会館プラザエフ 7階「カトレア」(東京都千代田区六番町15番地)

開催方法

会場参加

参加者

54名

セミナー開催報告

 2025年7月11日(金)、主婦会館プラザエフ7階カトレアにて「消費者との安全・安心なネット取引に向けて」をテーマに消費者庁後援による「2025消費者志向経営セミナー」が開催されました。当日は、消費者庁消費者制度課古川剛課長をお迎えし、開会のご挨拶をいただきました。古川氏からは、デジタル化が進む中、消費者団体訴訟制度の役割や適格消費者団体と事業者との協働の重要性が語られました。その中で、「訴訟だけでなく、日々の対話を通じて健全な市場を築くことが大切であり、適格消費者団体が事業者との対話を通じ、健全な市場形成に貢献していること、そうした団体を支援する消費者スマイル基金の意義について非常に大きいと感じています。」と述べられています。さらに、「ネット取引の安全確保に向けて、講師の方々の知見を行政の施策に活かしていきたい。」との意向も示されました。その後、龍谷大学法学部教授 カライスコス アントニオス氏と楽天グループ株式会社渉外統括部政策渉外部ジェネラルマネージャー片岡康子氏、公益社団法人日本通信販売協会(以下、JADMA)専務理事万場徹氏を招いての講演では、有識者、事業者、業界団体各々の取り組みのお話をいただきました。休憩を挟み、第2部ではパネルディスカッションを行いました。パネリストにご講演いただいた楽天グループ㈱の片岡氏とJADMAの万場氏、龍谷大学教授のカライスコス氏に消費者庁の古川氏を加えて、コーディネーターの消費者スマイル基金理事の坂倉忠夫がスムーズに進行しました。

①講演「安全・安心なデジタル取引に向けた政策と実務」
 龍谷大学 法学部教授 カライスコス アントニオス氏

 龍谷大学のカライスコス教授による講演では、「安全安心なデジタル取引に向けた政策と実務」をテーマに、 消費者志向経営とデジタル取引の課題、特に“ダークパターン”に焦点を当てて解説されました。個人データの 不透明な扱いやフェイクレビュー、カスタマージャーニーの悪化などが指摘され、OECDの定義をもとに“ダー クパターン”の分類(強制、インターフェース干渉、執拗な繰り返し(ナギング)、妨害、こっそり(スニーキング)、 社会的証明、緊急性など)と具体例が紹介されました。さらに、日本ではダークパターンに対する直接的な規制 法は存在せず、消費者保護法、個人情報保護法、競争法に分散して対応していることや国内外の規制状況、事 業者がダークパターンを使ってしまう背景、そして今後の対応として認定制度の導入や分野横断的な規制の重 要性が語られました。最後に一般社団法人 ダークパターン対策協会の活動にも触れ、認定制度による共同規制の展望を以下 のようにお話しいただきました。 「この協会の主な目的は、法令違反ではないが適切とも言えない、いわゆるグレーゾーンの事例を拾い上げ ることにあります。そのため、消費者庁、総務省、公正取引委員会、個人情報保護委員会などの関係省庁と 連携し、ダークパターン事例に関する情報提供窓口の設置を目指します。外部認定審査機関ということで、消 費者団体や適格消費者団体などにも役割を担っていただきたいと考えています。実務の現場とも連携しながら、より実効性のある対策を進めていく予定です。

②講演「楽天市場の消費者保護の取り組みについて」
 楽天グループ㈱ 渉外統括部 政策渉外部 ジェネラルマネージャー 片岡 康子氏

 楽天市場は、創業以来、時代やニーズの変化、ECの成熟度などに合わせ、行政機関や知的財産の権利者、 他のECプラットフォーム事業者をはじめとする外部との連携、法令遵守体制の強化により取引の安全性向上に 取り組んできました。また、消費者保護を重視したECプラットフォームとして、出店審査やモニタリング、違反 点数制度を導入し、店舗のルール遵守を促進しております。店舗のルール違反を検知した場合は、その内容に 応じ、再発防止のための講習から契約解除まで違反点数に応じたさまざまな措置を実施しています。消費者向 けには、リコール情報や詐欺事例などの情報発信、ヘルプページや問い合わせ方法の充実(チャット・電話・メー ル等)、「あんしんショッピングサービス」によるトラブル救済などに取り組んでいます。 また、安全・安心な取引環境を実現するために、出店審査や出店後のモニタリングとルール遵守の確認等、出店事業者向けの取り組みだけでなく、ユーザー側の不正利用防止という観点での取り組みも行い、消費者と店舗双方が安心して利用できる仕組みづくりを進めています。その他、オンラインマーケットプレイス協議会(JOMC)を通じて加盟各社の消費者保護の取り組みを公表し、ECプラットフォーム事業者が行っている自主的な取り組みを強化しています。消費者の方々には、ECプラットフォーム事業者による消費者保護の取り組みを知っていただいた上で、そのような取り組みを行っている事業者を選択し、安心して使っていただきたいと思います。

③講演「通信販売における苦情相談の現状と今後の対応」
(公社)日本通信販売協会 専務理事 万場 徹氏

 JADMAは1983年設立の業界団体で、約600社が加盟しています。通販業界の健全化を目指し、消費者向けには自主規制や通販利用の注意喚起、講師派遣、情報発信など、事業者向けには法令周知や法令相談、ガイドライン作成、教育支援を行っています。特商法に基づく苦情相談機能も持ち、会員・非会員問わず対応しています。最近は定期購入トラブルや詐欺サイトへの注意喚起を強化し、消費者にクーリングオフは通販にないことや支払い方法の選択にも注意を促しています。事業者に対しても返品特約の明示についての制度を伝えています。悪質事業者対策として、掲載判断の利用として広告業界団体への情報提供を行っています。学校教育現場との連携や教材提供を通じて、若年層へのネットリテラシー向上にも取り組んでいます。通販業界の健全化と消費者保護を両立するため、幅広い取り組みを展開しています。

④パネルディスカッション【テーマ】安全・安心なデジタル取引に向けた消費者と事業者の協働

 パネルディスカッションは、1つ目の議題で、「ダークパターンによる消費者被害を防ぎ安全・安心な取引に向けた取り組み」、2つ目の議題では「デジタル取引における今後の消費者と事業者との協働の在り方」についてパネリストの方々で下記の内容で議論されました。

●「ダークパターンによる消費者被害を防ぎ安全・安心な取引に向けた取り組み」概要
 ダークパターンによる消費者被害防止に向け、事業者・団体・協会がそれぞれの立場で取り組みを進めています。楽天グループではユーザビリティ―やVOC活用による改善を重視し、景表法違反への対応も徹底しています。JADMAは中小企業向けに法令理解を促すセミナーを継続的に開催するなどの取り組みを行っています。(一社)ダークパターン対策協会はグレーゾーンに着目し、認定制度を通じて企業の自主的な姿勢確認と誠実な対応を促進しようとしています。今後の鍵となるのは、ダークパターンの共通認識の形成と消費者との信頼構築です。

●「デジタル取引における今後の消費者と事業者との協働の在り方」概要
 デジタル取引における安全・安心の確保には、事業者と消費者の協働が不可欠です。JADMAの万場氏は、悪質事業者の排除と中間層事業者の啓発・育成を重視し、消費者による注意喚起として、認定マークなどの峻別できる方法、その他、消費者教育のリテラシーを高めるための教育の強化を提案されました。楽天グループ㈱の片岡氏は、消費者保護の取り組みを行う事業者が消費者に選択されるというインセンティブが働くことがポイントだと考えており、事業者の情報提供とその情報を基にした消費者の購買行動が重要だと述べました。龍谷大学のカライスコス氏は、健全な事業者ができる防御策は、自分たちが健全であることをアピールすることだと考え、認定制度にはそのような意味も含めて運用していきたいと語りました。また、違反があった場合の是正姿勢の評価や事業者と消費者の対話の場の重要性を指摘しました。消費者庁の古川氏は、法令だけでなく企業の真摯な対応、すなわち企業の姿勢論や消費者と事業者の対話の重要性、信頼構築のプロセスが信頼性をより高めていく重要な鍵であり、消費者団体との協働による規律形成が信頼性向上につながるとまとめました。コーディネーターの坂倉氏より、まとめとして、「①「事業者、事業者団体、消費者、消費者団体、行政」各主体による協働と、社会への発信、意識や認識の醸成、②横の連携、あるいはトップダウンによる縦の連携、企業の中で消費者視点をしっかりと浸透させることが消費者志向経営に繋がっていく」とまとめました。セミナーの締めくくりとして、消費者スマイル基金理事長の河野康子より、参加者および登壇者への深い感謝の意を述べました。急速なデジタル化に伴い顕在化する「ダークパターン」などの新たな消費者リスクに対し、各登壇者から多角的な知見が共有されたことを振り返り、消費者スマイル基金として、今後も事業者と消費者が健全な関係を築けるような対話と協働の場を提供し続ける決意を表明して、2回目となる本セミナーは盛況のうちに終了しました。

プログラム

※後援:消費者庁

<プログラム>

時間
14:00~14:05 【開会】
消費者スマイル基金 理事 古谷 由紀子
14:05~14:10 【挨拶】
消費者庁 消費者制度課 課長 古川 剛氏
14:10~15:20 【講演①】
(テーマ)安全・安心なデジタル取引に向けた政策と実務
     龍谷大学 法学部教授 カライスコス アントニオス氏
【講演②】
(テーマ)楽天市場の消費者保護の取り組みについて
     楽天グループ㈱ 渉外統括部 政策渉外部
ジェネラルマネージャー 片岡 康子氏
【講演③】
(テーマ) 通信販売における苦情相談の現状と今後の対応
(公社) 日本通信販売協会 専務理事 万場 徹氏
15:20~15:30 【休憩】
15:30~16:10 【パネルディスカッション】
【テーマ】 安全・安心なデジタル取引に向けた消費者と事業者の協働
コーディネーター:消費者スマイル基金 理事 坂倉 忠夫
パネリスト:龍谷大学 カライスコス アントニオス氏
      楽天グループ㈱ 片岡 康子氏
      (公社)日本通信販売協会 万場 徹氏
      消費者庁 古川 剛氏
16:10~16:15 【閉会挨拶】
消費者スマイル基金 理事長 河野 康子